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俺は、意を決して、椎課長に問い掛けた。
「あの…椎課長って、なにものですか?」
瞬間、空気がどろりと粘度を変えた気がした。
椎課長が、にいい、と微笑んで首を傾げる。
「聞きたい?」
「いえ、やっぱり、いいで、」
「まあ、きみは知っていた方が良いよね」
椎課長は俺について来るように言って、どこかへと歩き出した。
道すがらすれ違う社員がみな椎課長に見惚れるが、俺はそんな気にならなかった。
何度も言うけど、げちょげちょだぜ?このひと。
「さっきの部屋は、うちの課専用の応接室なんだよ。ほかにもいくつかあるから、後で案内するね。で、いま向かっているのはうちの課の仕事部屋ね」
なぜだろう、一歩ごとに、嫌な予感が降り積もって行く。
本能が、全力で、行っては駄目だ!!と訴えてるんだよ。
どうにかして、逃げられないか。
椎課長の背中を眺めながら、俺はそんなことばかり考えてた。
「ここだ」
けれど、そんな思考も空しく、その場所は現れてしまって。
やめてくれ!!と心の底から願う俺の気持ちを無視して、椎課長はその部屋の扉を開けた。
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