ミックの場合

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 いつも行くカラオケボックスの向かいに本屋があって、そこが待ち合わせの場所。ユウはもう来ていた。 「あれ? ゴリランは?」 「呼んでない」 「は? ふたりで?」 「いいだろ、別に」 「あんた、抜け駆け?」  ちょっと前、あたしをファミレスに呼び出して、ユウとゴリランがふたりして、つきあってくれって同時に手を差し出した。  お見合い番組みたいに。  あたしはふたりともふったんだけど。  ユウは悪びれもせず、 「そうだよ。俺、抜け駆けするから」  だって。 「翔太郎を見習うことにしたんだよ。鈴ちゃんのこと、何度か断られていたけど、諦めなかったからね。いまじゃラブラブじゃないか、あいつら」  あたしは年上が好きなんだけどな~。 「正直、ユウと恋人同士になるとか、ぜんぜん想像できないんだけど」 「だよな。小さい頃から、そういうのとは無縁で来たからな、俺たち」 「うん。どっちかというと、兄妹みたいな? 一緒に風呂入れって言われたら、入れるかもしんない、いまだに」 「さすがにそれは無理だな。何するかわかんねえぞ、俺、男だよ」 「だよね。わかってるんだけど、男として見れないっていうか…」 「随分、ひどいな」  ユウが、ハーっと息を吐いた。
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