僕と失いたくない人

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夜が深くなった頃。 「凛、流石に飲みすぎだ」 「もっと、ろみます」 「呂律回ってねぇだろうが」 「ろむの、たくしゃん」 完全に酔っていた。 「ダメだ」 僕は、隣に座る京介さんに抱き付いた。 「おしゃけ、くらさい」 「駄目だ」 京介さんの横っ腹辺りに顔を擦りつけた。 「お前、猫みたいだな」 頭を撫でられた。 京介さんの手は、大きくて気持ち良かった。 「京介…しゃん」 首筋を甘噛みした。 「ちょっ、凛」 喉にも甘噛みした。 「凛、落ち着けって」 京介さんが肩を掴んで僕を離した。 「どうしたんだよ」 「京介しゃんは、まだ、僕の事、嫌いら無いって言える?」 「凛、何言って」 「嫌いなの?」 「嫌いって訳じゃない」 「じゃあ、僕と、してくれるよね」 自分の服を脱ぎ始めた。 「ちょっ、凛、お前、何、脱ぎ始めて」 「しましょ、京介さん」 「お前、やけになってるだろ」 「なってにゃい」 両腕を掴んで脱ぐのを止められた。 「脱ぐなって、俺にはその気はない」 「僕には、あります」 「凛、いい加減に……」 「いいらないですか。 僕なんて、大好きな人にいきなり訳も分からないままフラレて、 でも、その後、守りたい人が出来て、 守るものも増えていって、 その人が亡くなってしまって、 ウェディングドレスを両親に見せるって言う、些細な夢さえ、見せることが出来なかった。 それに、たった一人の弟が両親に 邪魔物扱いされてるのに気づいてるのに、 どうして良いか分からないって理由で 放って置いてるダメなやつなんですよ。 だから、僕が駄目な奴だから、 京介さん、いやになって僕と別れたんでしょ。 それしか、理由無いですよね」 何故か、涙が溢れてきた。 「凛、泣くな、言っただろ。 全部俺のせいだ、お前は悪くないって」 「だったら、どうして居なくなるんですか? 側に居てくれないんですか? どうして?」 「いつか話すって言うのは今なのかもな」 京介は、凛の涙を掬った。
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