僕と先輩

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その日から、京介さんを避けるようになった。 京介さんの迷惑になるなら近づかない方が いい。 京介さんの為なら、何でも出来る。 自分が我慢すればいいんだ。 我慢、我慢、大丈夫、大丈夫 言い聞かせればその内、慣れるよな。 寂しくて、悲しい。 会えないだけでこんなに苦しいことなんて 慣れてしまえば、苦しくなくなるかな。 そして、放課後。 とても長い1日が終わった。 京介さんと居るときは短く、時間がもっと欲しいと思っていたのに、 今は、時間がはやく過ぎ去って欲しいと思うようになった。 「京介さん」 この名前を呼ぶだけで幸せになれたのに、 今は、とても辛い。 「凛!!」 「京介さん」 「やっと捕まえた」 そういうと、僕に抱きついてきた。 「ちょっ、京介さん! ここ階段の踊り場しかも学校。 誰か来るかも知れないから、離して」 「離さない」 「いくら人気が無いとしても、離してくれないと困ります」 離れようとするほど、脱け出せない。 「俺のこと、避けやがって」 京介さんの声は弱々しく、今にも泣いてしまいそうだった。 「嫌なところあるなら、言ってくれ、 俺、そう言うの鈍いから……」 京介さんに抱き締められると落ち着く。 声や匂い、心音で落ち着いてしまう。 「なぁ、凛、俺のこと嫌いか。 受験控えてるからって、凛に構えないから なのか、デート出来なくて拗ねてるのか。 凛、俺の前から勝手に居なくならないでくれ、頼むから……」 抱き締められている腕に力が入った。 僕は、良かれと思ってやったのに、逆効果だったみたいだ。 「京介さんは、僕が邪魔じゃないですか?」 「邪魔なはずねぇだろ」 「じゃあ、最近上の空なのは何でですか? きっと、デートとか面倒なんですよね。 京介さんの側に僕が居ると迷惑になります それなら、近づかない方がいい。 勉強の事だけ、考えてくれれば、それで……」 「また、面倒なこと考えてるだろ。 とりあえず、俺の家でゆっくり話そう」
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