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 6月のある土曜日。  日中は蒸し暑い体育館でバスケットボール部での活動に夢中になり、その足で塾へ向かい、へとへとになって夜帰宅した陸人は、自宅がもぬけの殻だということに気付いた。  父親がゴルフで不在ということは予め知っていたが、母親もママ友たちと夕食会に出かけてしまっていた。  一人分の食事と置き手紙が整然とダイニングテーブルに並べられているのを見て、陸人の不満は出し抜けに爆発した。  「あー、もう勉強なんて嫌だ! もうやめてやる!! 塾だってやめてやる!!!」  両親の期待には出来れば応えたいし、勉強は他でもない自分の為になるということは理解していたものの、陸人はまだ小学生気分から抜け切れていなかった。  流されるがまま渋々塾通いをしている自身に対する嫌気も手伝い、陸人は無人のリビングで自暴自棄になって喚き散らした。  我慢していたテレビを好きなだけ観てやろうと思いついた陸人は、勢いをつけてソファに飛び込んだ。  手荒にリモコンを操作する。同世代の間で人気のアニメの放送の時間帯で、ほどなくして、暗闇を背景にした1人の少年の姿が画面に映し出された。  少年はまっすぐこちらを見つめている。陸人はそれをアニメのワンシーンだと捉え、先ほど爆発させた不満の余韻にかまけて意味なく画面を睨んでいたが、次第にそれがアニメの登場キャラではないということに気付き始めた。  音も出ていない。陸人はリモコンの音量ボタン部を操作したが、どれだけ音量を上げても音は一切聞こえてこない。  そして画面の中の少年は、ぴくりとも動かない。  にわかに異変を感じ出した陸人は、画面をまじまじと凝視した。
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