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やけに軽くなった体と頭で、辺りを見回すと足元に自分が寝ている。
「?」
すると、烏色の服を着た男がタブレットを見ながら突然現れた。
「失礼致します。登録ナンバー『ゐ・5572』の月宮良太郎様でございますね?」
「……はぁ」
男は、にこやかな笑顔を浮かべた。
「我社が管理しておりますデータによると、月宮様はあと60年と7ヶ月生命時間がございまして……ちょっとした手違いで」
「でえた? せいめいじかん?」
「おっと、これは失礼しました。データ……と申しますのは、月宮様の情報。とでも申しましょうか」
オレは烏男の顔を見つめたまま、手に持っていた竹刀にそっと手を添えた。
「おおっと。そんな物騒なモノを……そうでした……剣道の名手でしたね」
「オマエ。何?」
「落ち着いてくださいませ」
「オレに何をした」
烏男はタブレットに視線を落とすと冷淡な声で言った。
「貴殿は、部活へ向かう途中クラスメイトの女子がストーカーと思われる男に襲われそうになっている所を助けに入り、そこでうっかり刺されてしまった。と、いうことになっています」
「……あ」
断片的に記憶が甦ってきた。
「え? 死んだの?」
「正確には、生きておられます。昏睡状態でございます」
顔色ひとつ変えずに、烏男は頷いた。
「はぁ? 何? アンタ、死神? 妖怪? 魔法使い?」
「いえいえ、そのような妖しげな者ではございません、何と申しますか使者とでも申しましょうか」
「ウケる。それを信じろってんだ?」
「さようでございます」
烏男はニヤリと不敵に笑うと再び頷いて見せた。
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