第1章

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「―――ん……」 ぽかりと意識が覚醒する。 瞼を開けば、ほの白く明るんだ室内に日の出前と知る。 傍らの温もりに視線を転じると、そこには眠る秋月の顔……安らかな寝息。 夏目の口元に、知らず笑みが浮かぶ。 薄手のTシャツの肩から落ちかけていた上掛けを引き上げれば、秋月がうっすらと瞼を開いた。 「あ……すみません」 起こしてしまった?と夏目が腕を引っ込める。んん、とまだ夢うつつのまま、秋月が顔を寄せてきた。胸元にごそごそと潜り込まれて、夏目が擽ったそうな笑いを零す。 「……もう、朝か?」 夕べの余韻で少し掠れた、半覚醒の眠そうな声。 「まだ早いですよ……今日はお休みだし」 寝てて、と。背中に回した腕で、夏目が赤子をあやすようにぽんぽんと軽く叩く。額に落ちた唇が笑みの形に緩むのを感じて、秋月が瞼を開いた。 「なに……どうかしたか?」 「あのね……夢、みてた」 囁きに、夢?と秋月が聞き返す。 「うん……俺がこの店に来たばっかりの頃の……」 懐かしかったと夏目。 「……あの頃はいろいろあったな」 夏目の掌にまだ薄く残る傷。自分の肩を抱くその手の上に、秋月がそっと自分の手を重ねた。 「あれからずいぶん経つけど、秋月さんは全然変わらないね……真っ直ぐで、キレイ」 頬にかかる甘い色の髪を掻き上げて、睦言めいた言葉を紡げば、秀麗な眉がつと寄せられる。 「それは男に使う形容詞じゃないと思うぞ」 「性差別な発言はいけませんよ」 真面目な顔で言う秋月に、夏目がくちづけで答えた。
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