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夏目の形に変わっていく自身の内部に、秋月の唇が震えた。
漲った雄心をぎっちりと咥え込んでくるくせに、最奥ではとろとろと先端を舐めるような動きを見せる淫蕩な粘膜。普段の清廉な姿からは想像すら出来ない秋月の媚態。
「……俺だけのものだよね」
秋月自身ですら見ることのないであろう場所に付けた所有の証に、夏目が爪を立てる。
ああっと上がった甘く濡れた声に、秋月を苛む滾りがまた体積を増すのを感じた。
誰にも渡さないからと囁けば、それに応えるかのようにきゅう、と締めつける力が強くなって。雄心を絡め取られた夏目が限界を悟った。
「秋月さん―――好き」
熱く囁く声に、秋月が瞳を見開いた。だいすき、と見つめてくる黒曜石の瞳。
「……なつ、め」
夏目を呑み込んだ内部が知らず甘く震えて。
その誘惑に堪えきれなくなった夏目が、低く呻くと情熱を開放した。中でどくりと弾けた昂ぶりに、秋月が声もなく喉を逸らす。見開いた瞳から零れた雫が目尻を伝った。
一滴も余さず呑みこませようと奥の奥まで押し込んでくる夏目の腰に、秋月の足が絡みつく。夏目の背中に爪が立った。
「―――ッあ、あ、なつ―――ッ」
中を熱く濡らされる感覚に押し上げられて、秋月もまた頂点を極めた。
「……お花見、行けそうですか?」
腕の中でくたりとした秋月に、夏目が囁きかける。
「……少し、眠ってか……」
夕べから散々に哭かされていたのが、やはり堪えたのか。
身体を清める余裕もないまま、秋月が再びことりと眠りにつく。汗に濡れて額に張り付いた髪の毛を、夏目がそっと掻き上げた。
このまま少し眠らせてから、濡れた身体を拭いてあげよう。
微かに震える長い睫に、夏目がそっと唇を寄せる。
それから台所に下りて、お花見の弁当を作っておこう。ちょっと苛めすぎちゃったから、お詫びに秋月さんの好きな出し巻き卵を多めにいれなくちゃ。
「俺は一日中、こっちの花を見てても、いいんだけどな」
半ば本気の指先が、秋月の肌に散った赤い花を擽った。
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和食処秋月 番外編 花見月 了
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