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そこでルナに「またこのパターン?」とでも言いたげな視線を向けられ、焦りをヘッドギアに感知されたのか顔中から仮想の冷や汗をだらだらと流しながら慌ててウインドウを開く。
そこから新たにアイテムのストレージを開き、縦長のアイテム欄を勢いよくスワイプしてスクロールしていくと、その最下層に二つ、見覚えのないアイテムが追加されていた。
「≪壊れた聖炉≫と……≪ヘスティアーの加護≫……?」
「とりあえず、オブジェクト化してみよう」
ウインドウを可視化させるとルナがぐっと体を寄せて覗き込んできたので、見やすいように窓をそっと彼女の方へ押しやる。
ルナがアイテム名を読み上げるが、いまいち理解ができなかったのでオブジェクト化してみようと席を立ち、家具などが何も置かれていないスペースに移動すると、二つのアイテム名をクリックし、オブジェクト化ボタンを押し込んだ。
「あら、この器は……?」
すると、ふっと空中にアイテムが出現し、片方はがしゃんと盛大な音を立てて床に落下し、もう片方はゆっくりと床に向けて降下していく。
まるで落とした皿が割れるかのような、家事を行う者からしたらあまり聞きたくない音を鳴らして床に転がったアイテム≪壊れた聖炉≫は文字どおり、以前の蒼穹に浮かぶ箱庭の攻略の際にボスへと通じるメインクエストのキーアイテムとなっていた聖火を灯すための器と酷似した白磁の器だった。
だがそれはダンジョンで見た完全な姿ではなく、「壊れた」と名につく通りバラバラに砕け散っていた。
一目見た瞬間はまさか今落とした際に割ってしまったかと内心少し焦ったが、そもそも空中でオブジェクト化した瞬間からバラバラに分かれていたし、大丈夫だろうと言い訳がましく自己弁護して納得させてから、次にふっと音もなく地面に着地していた拳大の小さな光を両手で包み込むように持ち上げる。
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