歌姫舞闘

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マリアさんのツッコミにあっさりと内部事情を暴露することで応えると、ヘスティアーは「さて」と居住まいを正し、改めて俺達に向き直る。 「ええと、初めましての方も居ますし、改めて自己紹介をさせていただきますね。12人のGMの一人を務めさせていただいています。そして浮遊ダンジョン≪ヘスティアー≫のボスを務めさせていただいておりました。ヘスティアーと申します。以後お見知り置きを」 ふわりと微笑み、そう言って手を差し出すヘスティアーに困惑しつつも、シャインは「ど、どうも……」とそっと手を握り返し、セブンもそれに倣う。 それを受けるとヘスティアーは嬉しそうに「よろしくお願いします」とはにかんだ。 「で、今更だけどなんであなたがここにいるの?」 「それはGMですから、運営の権限を使ってマリアさんのプレイヤーIDを追跡して、移動がここの座標に留まるのを確認したので直接転移して来ました」 「いや「どうやって来たか」って意味の「なんで」じゃなくて、理由の方が聞きたいのだけれど……」 マリアさんの問いにヘスティアーがどこか誇らしげにそんな的外れな答えを返すと、それを聞いたマリアさんは疲れたように項垂れながら、再び突っ込む。 この間の戦いの時から薄々感じては居たのだが、どうにもこのヘスティアーという女性は天然の気があるように思えてならない。それも割と重度の。 天然といえばルナも時々そんな面を覗かせることもあるが、あくまで時々だ。彼女ほどではない、と思う。 「ああ、用件の方ですか。それはですね、そちらの天城さん……こちらではシャインさんと呼んだ方がいいでしょうか。 シャインさんの番組の撮影とNOAH側の技術関係が私に一任されたので、今回はそのご挨拶と、打ち合わせに出向いた次第です」
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