再会

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≪ヘスティアーの加護≫というアイテムを持ち上げてみてまず感じたことは、「重さがない」ということだった。 確かに、触った感触はある。硬いのか、柔らかいのかすらも曖昧な不思議な感触だが、それでも確かに「そこにある」ことは疑いようもない。 だが全くの重量を感じず、まるで光や空気の塊そのものを持ち上げているかのような不思議な感触を覚える。 試しに握り込んで見ると、薄い光を纏う球体は握り込む拳に合わせて収縮し、完全に拳を握る頃には指の隙間から僅かに白い光が漏れるのみというところにまでなっていた。 「また何か変なアイテムを持ってきたわねぇ……」 そんな何もかもが曖昧なアイテムを弄くり回す俺に嘆息しながら、マリアさんは床に落ちた聖炉の小さな破片を摘み上げ、右手の人差し指でちょんと小突く。 すると彼の手元に通常のプロパティ・ウィンドウよりも幾分大きなウィンドウが出現し、そこに表示された文字列を追ったであろうマリアさんは、んまっ! と声を上げた。 「これ、最上級の炉の強化アイテムじゃないの!」 「へぇ……マリアさんの炉に使えますかね?」 「反応薄いわね……まあ、使えるわよ。あとはそっちの変なのは……」 「変なのって」 確かに変なアイテムではあるが。 器の破片を全て拾い集め、テーブルの上に移動させたマリアさんに加護を手渡すと、再び≪鑑定≫スキルを発動させたマリアさんがまたもよくわからない声を上げた。 「鑑定した限りだと、どっちも炉の強度を大幅に上げるブーストアイテムみたいね。今のところ確認されてる炉の到達点を一気に引き上げる、鍛冶屋からしたら喉から手が出るほど欲しいものよ」 「それなら、アレの加工も出来るようになるのかな?」 「そうね。あなた達のおかげで、これで条件は揃ったことになるわ。きっとブループラネットインゴットも加工出来るはずよ」 流石は炉を司る神ヘスティアーの名を冠するボスからのドロップアイテム。 どうやら入手難度に引けを取らず、その効果も破格のものらしい。
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