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「それとそこの、セブンは受験生だから、入試が終わるまで活動はできないわ。活動自体は試験に合格したら解禁になるから、しばらくは頭数に数えられないわね」
「あら、それはそれは」
リリアさんの影に隠れるように縮こまるセブンを指差し、俺達の一番の懸念事項を伝えると、ヘスティアーは一瞬驚いたように瞠目しつつも、「月並みですが、頑張ってくださいね」などと優しく微笑みながら激励の言葉をかける。
運営側の人間として、彼女はゲームのレーティング以下の年齢のプレイヤーの存在はどう判断するのか気がかりだったのだが、どうにも杞憂だったようでヘスティアーの反応は至極あっさりとしたものだった。
その反応は当事者であるセブンも予想外だったようで、肩透かしを食らったように「あ、はい……」とこくこく頷いていた。
「大丈夫ですよ。そんなに怯えなくても、ゲームのレーティングが守られないことなんて最初から織り込み済みですから、わざわざBANしたりなんかしません」
「その発言は運営としてどうなんだろう……」
「そうは言っても、人の好奇心に蓋なんてできませんからね。確かに小学生だとか幼児がプレイしてるようなら問題ですけど、そもそもそういった子ども達がアークを使おうとした場合、プレイ以前に脳波のパターンで強制終了するようにセーフティーがかけられてますし」
そういえば、初めてアナザーワールドをプレイするにあたってヘッドギアーー≪アーク≫ーーの説明書を読み込んだ時に安全性確保のために脳波のパターンである程度の年齢を判別し、フルダイブに適さない脳波パターンーーつまり小児などーーの場合安全装置が働き、動作を停止するという記述があったのを思い出す。
後日簡単に調べたところ、人間の脳波は思春期から初老期までの期間、安定して変化が殆どないためその時期が最もフルダイブに適しており、それ以前ーー出生から思春期までの安定しない時期ーーは安全性の配慮からフルダイブの使用ができなくなっているらしい。
つまり、今こうして彼女がダイブ出来ている時点で何の問題も無いということだ。
……まあ、モラル的にはあまり良くないかもしれないが、少なくとも健康に問題が無いならそれでいいだろう。
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