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「よし、あとは……はい」
「……なにこれ」
フレンド登録が終わると、すぐにシャインから数桁の数字の列と、数字とアルファベットが入り混じった文字列が打ち込まれたフレンド・メッセージが届く。
「あたしのプライベート端末の電話番号と、メッセージのアドレス。あとであんたの端末にでも送って登録しておきなさい」
「……はい?」
「仕事の連絡とかしなきゃいけないかもしれないでしょ。他のみんなとも交換したから、あんたも連絡先を寄越しなさい」
「いつの間に……」と思いつつ、届いたメッセージに返信する形で端末と自宅の電話番号、メッセージアドレスを書き込み、送り返す。
そして送られてきた彼女の連絡先を指示通り端末に送信すると、そんな淡々とした作業の様子がお気に召さなかったのか、シャインは面白くなさそうに唇を尖らせていた。
「アイドルの連絡先をゲットしたんだから、もうちょっとリアクションはないわけ? ファンからしたら垂涎ものよ?」
「自分で垂涎ものとか言っちゃうのか……」
口ではそう言うが、確かにアイドルの連絡先など一般人のファンにはまず手に入らない。垂涎どころか喉から手が出るほど欲しい一品だろう。
俺はともかく、身近に彼女のファンが居るので、連絡先を受け取った時の彼女の心の内は容易に想像がつく。
「ま、あんたにそんなリアクションは期待してなかったし別にいいけどね。じゃ、今度こそあたしは落ちるから」
「ん、お疲れさん」
「お疲れ。あ、そうだ。あたしからの連絡、あんたは無視したら許さないからね」
椅子から立ち上がり、今度こそログアウトするというシャインに労いの言葉をかけると、シャインは言葉の前半は部屋にいるパーティーメンバーに向けて、そして後半は俺にだけ聞こえる声でそう言い放ち、ログアウトしていった。
「なんだったんだ一体……」
体を透けさせていくシャインの姿を眺めながら、最後の言葉の真意を考えるが人付き合いの苦手な俺に分かるはずもなく、結局「とりあえず天城からの連絡には気をつけよう」と無難な答えを出すと、この後の予定をどうするのかパーティーメンバー達と相談すべく、ルナ達の元へと足を進めたのだった。
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