雷帝再起

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「で、これから軽くこことパーティーメンバーを紹介したら移動だっけ?」 「そうだな。念のため台本確認しておくか?」 「んー……そうね。一回ルナちゃんと合わせてくる。パーティーの中だとあの子が一番セリフ多いし」 これからの段取りを簡単に確認してくるシャインに頷きを返すと、シャインは次のパーティーメンバー紹介のカットの打ち合わせをするべく、パーティーの代表として割り当てられたセリフ量が最も多いルナの元へと駆け寄っていく。 ルナは現在俺達から少し離れた場所で入念に台本を読み込んでおり、シャインとのセリフ合わせはいい気分転換にもなるだろう。 「なんだかあなた達もすっかり慣れたわねぇ」 「まあ、撮影自体は三回目ですし。いいお手本をずっと眺めてればそれは慣れもしますよ」 持ち込んだ台本データが表示されているであろうウインドウを浮かべ、リリアさんも交えてセリフ合わせを始める女子三人を眺めていると、カチンコをぷらぷら揺らしながらマリアさんが歩み寄ってくる。 「本当、若い子は飲み込みが速いわねぇ。アタシもまだ若いつもりではいたけど、自信無くしちゃいそう」 「何言ってるんですか。実際まだまだ若いでしょう」 しみじみと嘯くマリアさんに突っ込みつつも、俺も渡された台本のデータに視線を落とす。 最初の全員揃っての打ち合わせからおよそ二週間が経ち、本日は撮影が本格的に始まってから三回目の収録で、放送内容としては第五回目の撮影を行なっている。 打ち合わせ直後の九月二十三日から二十五日までの三連休から撮影が本格化し、第一回から第三回まではゲームシステムやマザータウン近辺の紹介に当てたので三連休初日に纏めて撮ってしまい、第四回の攻略済みエリアの紹介は二十五日までの二日間を利用してロケを敢行し、撮影が終了して今回の第五回は実際に前線に出ての紹介ということで、冒頭のシーンを撮影後、現在の攻略最前線≪イロスギア≫に向かう手筈となっている。 そんなわけで、前線に出るときの護衛をするという契約通り今回からは俺にも出番が回ってくることになり、セリフは少ないとはいえ初の撮影ということで柄にもなく緊張してしまい、台本のチェックに余念がない。
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