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「でも、本当に大丈夫なんですか? イロスギアまでの道中、フィールドMobでもなかなか強かったですけど」
「あら、珍しく弱気?」
「いや、まあ……」
「大丈夫よ。前線なんだし、敵のステが高いのはわかってる。でもあの子も護られるだけってほどか弱くはないし、それに低レベルの子を庇いながら街まで行くのは初めてではないでしょ?」
「そうですけど……」
「それに多少敵が強いくらいの方がテレビ的に映えるじゃない。≪ヘスティアー≫を攻略したあなた達ならちょっと強い程度のMobなんて問題にならないでしょう?」
それを言われると弱い。
確かに、前回セブンを連れてイロスギアまで向かったときも何度かMobとの戦闘を経験したが、確かに最前線だけあってステータスもそれなりに高かったが、それでも≪ヘスティアー≫に湧出する理不尽なまでのステータスとAI強度を誇るMobとは比べるまでもない。護衛対象が一人増えた程度なら、まあなんとかなるだろう。
もしも「≪ヘスティアー≫のフィールドで撮影する」などと言われたときには頑として拒否するつもりだが、流石のマリアさんも箱庭の撮影は当分やるつもりは無いらしい。
「そういえばヘスティさんも護衛しなきゃいけないんですか?」
「いいえ。私はモンスターにターゲットされないようになってますし、それにシステム保護を受けてるので気になさらなくて結構ですよ。居ないものとして考えてください」
「そ、そうですか」
この辺りの融通性はさすがGMといったところか。
俺も散々チートだなんだと言われてきたが、この人の方が余程チートだろう。
いや、彼女は運営側の人間なのだから当たり前といえば当たり前なのだが。
「ライト君、読み合わせ終わったよ。みんないつでも大丈夫だって」
「わかった。俺も大丈夫だからそっち行くよ」
俺のことを呼びにきたルナに従い、シャインとリリアさんが待つカメラの前に移動すると、マリアさんに準備完了と目配せをする。
するとマリアさんは頷き、カチンコを持ち上げる。
色々と懸念事項は尽きないが、まあ今は撮影に集中するとしよう。
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