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こんな精神論的なことを言うのは、現実至上主義を掲げる俺としては全くらしくないことだろう。
だが、ただのデータの塊と切り捨てるにはあまりにも多くの時間を共にし過ぎた。
もしかしたら、この三ヶ月もの間仮想空間での時間を全力で生きる少女の隣で過ごしたことで知らぬ間に影響を受けたのかもしれない。
しかし、その影響が悪いものだとはどうにも思えない。
もしも三ヶ月前の俺が今の俺を見たら何と言うだろうか?
この三ヶ月間分の記憶の波に押し流された当時の俺が何を思うのか、今ではもう分からないが少なくとも悪し様に思うことはあるまい。
「ありがとう。確かに承ったわ。色々と他にも準備があるから今すぐにとはいかないけれど……なるべく早く仕上げられるようにするから」
「よろしくお願いします」
最後に一度礼をすると、俺の手元から愛剣の重さが消える。
次に彼と顔を合わせるときは、彼はどんな姿で、どんな性格の剣になっているのだろう?
今はどうなるのか想像することしか出来ないが、一つだけ確かなことは持ち主に似て良くも悪くも無茶苦茶なものになるに違いない。
どんなものになるか不安に思いつつも、どきどきと気分が高揚するような錯覚を感じる。
幼かった頃、初めて両親から自転車を贈って貰って以来もう随分と久しく感じていない感覚だったが、なるほど、今でも存外悪くない気分だ。
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