プロローグ

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2050年9月6日 「ライト君、調子はどう? 変な感じとかしない?」 「大丈夫大丈夫。ってかこのやり取りもう四回目なんだけど……」 こちらを心配するルナの言葉に苦笑混じりに返してから、さりげなく突っ込む。 四日の日曜日に行われたヘスティアーとの激闘から二日が経ち、相棒からのログイン禁止令が解除されたのでいつも通り姉さんと食事を済ませ、洗い物入浴その他もろもろを手早く終えてから二日振りとなる異世界へとログインしたわけなのだが……ログインしてから約一時間の間に既に四度も相棒から体調を窺う言葉をかけられていた。 体調は、特に悪いところはない。むしろ頭は冴えてるし、アバターを動かす感覚にも特に変わったところはない。 若干体が軽いような感じはするが、その辺りはいつも背負っていたルナとは別の、一振りの相棒の姿がないからだろう。 総合的に見ると、今のところの体調に関してはむしろ絶好調とも言える。 「……何かあったらすぐ教えてね?」 「大丈夫。そうなったらすぐ伝えるよ」 笑い飛ばしてもなお不安そうな目をこちらに向けるルナに、じっと瞳を見つめ返しながら殊更にはっきりとした声音で言い切ると、多少は安心してくれたのか、ふっと表情を和らげてから気恥ずかしそうに視線を逸らす。 相変わらずの信用のなさに少し泣きそうだが、この辺りは今まで無理無茶を押し通してきたツケが回ってきたというものだろう。身から出た錆と言うものだ。 自分のそんな考えに勝手にちょっぴり傷つきつつ、テーブルに置かれたソーサーの上に乗せられた現実世界だったら五桁はしそうなカップを手に取り、口につけて傾ける。 湯気ともに香ばしい香りを漂わせながら口の中に入ってきた苦い液体をちびちびと飲み下していると、玄関のドアがコン、ココココン、と不規則な軽い音を立てた。
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