再会

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「す、すみません! 前をよく見てなくて……」 「ううん、元はと言えばあたしが飛び出したのが悪いんだし、こっちこそゴメンね」 我に返った美月が慌てて尻餅をついた少女に駆け寄り謝罪の言葉をかけると、艶やかな黒髪を背中まで伸ばした少女は苦笑混じりに立ち上がり、美月に軽く頭を下げる。 「……って、アレ? 美月ちゃん?」 「え……? なんで私の名前……」 それまでは顔を伏せていた為相手の顔はお互いに見えていなかったのだろう。 頭を上げた少女のダークブラウンの瞳が美月の顔を捉えると、少女は声音を僅かに驚きに染めて美月の名前を呼んだ。 「あ、そっか、これじゃ分かんないよね……ちょっとこっち来て」 「えっ? えっ?」 「ちょ、ちょっと待て……!」 なぜ初対面のはずの相手が自分の本名を知っているのか。 頭上に疑問符を浮かべる美月を見て得心がいったように頷くと、少女は辺りの様子を伺ってからガシィッ! と美月の細腕を掴み、何やら人気のないデッドスペースに連れ込もうと腕を弾き始める。 さすがに眼の前で拉致されるわけにもいかず慌てて何もわからぬままずるずると引きずられていく美月の後を追うと、薄暗く、細い路地に入ったところで少女は足を止め、美月を解放した。 「うん、ここならいいかな」 ようやく解放され、逃げるように後から追ってきた俺の元へ駆け寄ってきた美月が誰何の声を上げようとすると、突如少女は右手を自分の頭頂部に置き、無造作に髪を掴むとあろうことか、バサァッ……と一息に引き剥がした。
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