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「それでは、紹介しますね。私がスカウトしてきた、セブンさんです」
「よ、よろしくお願いします!」
一先ずリリアさんと彼女と一緒に来ていた一人の女性プレイヤーを部屋に招き入れ、カウンターから引っ張ってきた椅子に座って貰ったり、ルナと戻ってきたマリアさんが紅茶とお茶菓子を用意するなどの準備を済ませると、セブンと呼ばれた少女の隣の席についたリリアさんが、そんな唐突に過ぎることを言い出した。
「……はぇ?」
あまりの唐突さに、思わず口から意味をなさない変な声が漏れてしまう。
見ると俺の両隣の席に着き、リリアさんとセブンさんと向かい合う形で座っているマリアさんとルナも、声にこそ出していないが呆気にとられているようだった。
すると、そんな俺達の反応に少女が「あれっ?」とばかりに首を傾げ、リリアさんは変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。
「マリアさんはともかく、二人にはお昼休みに説明したじゃないですか。会わせたい人がいるって」
「いや、まあ、聞きましたけど……「会わせたい人がいる」とだけ」
「だけ」というところだけ少し強調して言うと、リリアさんは面白そうに「あらあら」と笑う。
確かに、今日の昼休みいつも通りのメンバーで昼食をとっている時に百合さんから「会わせたい人がいるから午後八時頃にはマリアさんの万屋に来ていてほしい」という話は聞いていた。
だからこそ俺とルナはおざなりになっていた「≪ヘスティアー≫の主街区≪ウェスタ≫を隅々まで探検してみようツアー」の予定を取り止めてヘスティアー城のホールに再び出現していた転移陣を利用し、ここにやってきているわけだ。
だが、俺達が前もって教えられていた情報は、あまりにもざっくりした用件と指定の時間だけ。
会うという人物が女性の、それも俺達より少しだけ年下と思しき少女で、その子をリリアさんがスカウトしてきたという情報は、たった今、目の前に突きつけられて初めて得たことになる。
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