プロローグ

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「私は……正直ゲームそのものもあまりやった経験はないし、他のプレイヤーの人と関わりを持つこともこれが初めてだから難しいことはわかりません。 でも、リリアさんも、あなたも、このパーティーはあまり好意的に思われてないって言ってたけど、少なくとも私は、人を心配できる皆さんが周りの言うような悪い人達ではないと思います」 「心配してるフリかもしれないけど?」 「嘘と本音を見分けるくらいはできますよ。嫉妬と陰口と建前と醜い本音が渦巻くグループ社会を生きる女の子ですから」 あれ、俺の知ってる女子のイメージと違う……。 女の子ってもっとこう、コミュニケーション能力が高くて素直で優しいふわふわしてる体の半分は優しさで出来てるような存在ではないのだろうか。 それとも俺の隣に座っている子が特殊な例なのだろうか。どうしよう、女の子怖い。 と、内心で世の女子に戦慄していると、セブンはコホン、と一度咳払いをしてから話を続ける。 「それに、元々集まりとしての力が弱いのはリリアさんから聞いてましたし……そもそも私にとって覇権争いだとか、勢力なんて知ったことじゃありません。 私はただ、困ってる時に手を差し伸べてくれたリリアさんに恩返しがしたいだけです。 これは志望動機にするには弱いでしょうか……」 消え入るようなか細い語尾とは裏腹に、じっとこちらを見つめるセブンの瞳には強い光が宿っている。これは何か覚悟を決めたものの目だ。 頑ななセブンに嘆息しつつ、最終的な判断は任せるとパーティーリーダーに視線を送ると、その視線を受け取ったルナはセブンに向き直り、一度微笑みかけると着座の体勢のまま、頭を下げた。 「わかりました。それでは、これからよろしくお願いします。最初は何かと苦労することも多いと思うけど、私達が全力でサポートするから何かあったらすぐに言ってね。 こんなパーティーに参加を決めてくれて、本当にありがとう」 「は、はい! こちらこそありがとうございます! よろしくお願いします!」 ルナの礼を聞くと、セブンは弾かれたようにガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、深々と腰を折る。 こうして、俺達のパーティーに一人のショートソード使いが参加することが決定した。 この少女が後々アルマダ達前線組を驚かせるのは、もう少しだけ後の話……。
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