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クリス・クリングルは、花園部長が数年前のオーストラリア赴任中、地元で体験したクリスマス・イベントなのだという。
まず、企画者(今回の場合は、花園部長)が前もって誰が誰にプレゼントを用意するのかを決める。そして、それぞれの名前は企画者以外には秘密とされる。
参加者は、企画者からプレゼントを渡す人の名前の書かれたメモを受け取るが、その相手には自分の名前を明かさない。プレゼントは全てクリス・クリングルからとする。
「予算は500円から1000円で、相手の人に相応しいプレゼントを考えて用意してください。もちろん、手作りでもOK」
ざっと説明を終えると、花園部長は部内の全員に「誰にも見せちゃだめだよ」と言いながら小さなメモを渡した。
「質問があったら、後で部長室に聞きに来て」
裕美子が花園部長から受け取ったメモをチラ見すると、そこには先輩の真弓の名前があった。
真弓には入社以来ずっと世話になっている。今までの感謝を込めて、何か良いものを用意しなくては。
裕美子は、思いを声に出せない代わりに目を細め、部長からのメモを小さく折りたたんだ。
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