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「ありがとう。クリス・クリングル!」
花園部長が包みを開くと、部署フロアは笑いと拍手で盛り上がった。部長がプレゼントされたのは、赤と緑のクリスマスカラーに彩られた救急セット。
金色の絆創膏など、どこで見つけたのだろう。なぜか怪我の多い部長を気遣ってのプレゼントに場が湧いた。
今日は部長の計らいで、定時が二時間引き上げられた。会社国際部のフロアでは、かねてからの予定通り、クリス・クリングルのイベントで部署の今年の打ち上げが行われていた。
「次。真弓さん」
裕美子の先輩だ。真弓は包みの中から出てきたクリスマス・クッキーを見ると、嬉しそうに目を細め、早速ハイハイとみんなに分けて回った。
「え、真弓さん、良いんですか?」
「メリー・クリスマスのおすそ分け」
クッキーを手にするみんなが、明るい笑顔を真弓に返す。それがこの先輩にとっての一番のクリスマス・プレゼントなのだ。
裕美子はそんな先輩の性分に改めて尊敬の念を抱き、自分も真弓にとびっきりの笑顔を向けた。
「これはシャレにならないよ~」
燃えたぎる炎がデザインされたTシャツを手に、佐藤課長が泣きそうな声を上げる。課長は数年前、まだ営業部にいた頃に、住んでいたマンションが火事の被害にあい、大変だったことがあるのだ。
向こうの方で、派遣の相田さんが肩を揺らして笑っている。当時も、彼女が落ち込んだ課長のことを、おいしいお茶で癒してあげていたのだろう。もしかしたら、炎のTシャツは相田さんからのクリス・クリングルなのかもしれない。
その後も一人一人のクリス・クリングルが紹介され、みんなの前でプレゼントが披露された。予算内でそれぞれに苦労したであろう、個性的なプレゼントに声が上がる。内心、来年は自分もこれにしようと思うようなアイデアの参考になるものも多くあった。
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