一寸先の人生②

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 半年が過ぎた。  夏の夕方。店の前で、打ち水をしている大森さんとばったり顔を合わせた。 「鮫島さん、おひさしぶりです」  大森さんは屈託のない笑顔を向けてきた。 「いや、ごめん」  修治は屈託(くったく)を隠しつつ、もごもごと口の中で言いわけをする。 「ずっと忙しくて、なかなかお店に寄れなくてさ」 「いいんですよ。お時間があるときに来てくださいね」 「本当に、ずいぶんご無沙汰(ぶさた)しちゃって」  大森さんの笑顔から逃れるように視線を泳がせていた修治は、おやあ、と声を上げていた。 『台湾屋台の店・点点』  建物の外観は変わらない。が、看板が、国が違う。 「お店、どうしたの?」 「二ヵ月くらい前ですかね。経営者が代わったんです。ありがたいことに、わたしは続けて働かせてもらっています。餃子や点心のお店で、夜はお酒も飲めますよ」 「経営者って、あのマスター、やめちゃったの?」  大森さんは頷いた。 「前のマスター、なにかあったの?」 「大怪我をしちゃったんです」 「事故?」  修治は内心、首を傾げた。それほど経営状態が悪いようには見えなかったのに、怪我くらいで店を手放すものだろうか。 「事故というより、人災でしたね」  大森さんの眉がくもった。 「どういう意味?」
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