一寸先の人生②

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 よくよく事情を聞いてみて、修治は驚いた。マスターは女に刺されて警察沙汰になったのだという。 「マスター、女性関係がかなり乱れていたみたいですね」  大森さんはのんびりと言う。 「あれじゃ奥さんもたまらなかったろうな」  他人ごとのようだ。いつかの夜の光景が脳裏に浮かぶ。大森さんも「関係者」のひとりじゃなかったのか。 「奥さんがいたのか」 「でも、刺したひとには結婚の約束をしていたみたいで、いけないですよねえ」  大森さんは肩をすくめてみせた。 「マスターが女を口説くのは挨拶みたいなものでした。わたしにまでいろいろと嬉しがらせを言ったりするんですよ」  修治はほっとした。おそらく、あの晩見たのも、そういうことだったのだ。 「わたしみたいに毎日一緒に仕事をしていれば、誰にでも同じことをするのがわかって、本気にはしないんでしょうけどねえ」  大森さんはよくできた娘だ。野郎といい仲にはならなかったみたいだ。よかった、よかった。  まあ、俺には関係ないけれど。明日は佳世子と会うんだ。そう、関係ない。  そうだ、明日は、佳世子をこの店に連れてこよう。  餃子も大根もちも焼売もちまきも、うまかった。店主は小太りの中年女で、以前とは違う意味で愛想もよかった。
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