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今は午後四時。
今日は会えない。そう諦めていたのに、突然現れた彼。
それはまるで神様からのご褒美のよう。今まで見つめることしか出来なかった聖人が、何かに背中を押されたように彼に声をかけたのは、きっと運命の悪戯。
彼の髪が濡れているのに気付いた聖人は、慌ててタオルと傘を差し出した。
「これっ、よかったら……あの……使って下さいっ」
精悍な顔立ちに甘めの目元と口元。薄いブルーのボタンダウンシャツと紺色のパンツがよく似合っている。背が聖人より断然高い。百六十五センチの聖人が見上げる程。おそらく百八十五センチはある。がっしりした肩、厚い胸元。男性らしい色気を漂わせている。
「……ありがとう」
彼はタオルと傘を受け取ってくれた。その時微かに指先が触れた。
彼の指先は雨に濡れたせいで少し冷たい。きっと聖人の指先のほてりを彼は感じたはず。
そこから聖人の恋心が伝わってしまわないだろうか。そんなあり得ない心配を聖人は抱いた。
「君……いつも俺のオーダーとってくれる子だよね」
「は、はいっ。い、いつもご来店、ありがとうございますっ」
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