荊の姫

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二人で花祭りを見に行ったの。 綺麗だったわ。 二回目のデートだった。 帰り道、何処か寂しさが漂う暗い路地を二人で肩を並べて歩いた。 色んな花で飾られた大通りの景色が忘れられなくて、ずっとその事を話してたらジェービスったら苦笑いするのよ。 でも、ジェービスが意外と甘い男だと知ったのもその時だった。 花を見たり露店を冷やかしたりして歩いている途中も私の暗褐色の髪を触ってきたり、頬をつまんでみたり。 私はジェービスが初めての恋人だった。 触られる事に対して慣れなくて、そのたびに体が固まっちゃった。 肩に回される手を解いたり、頭を撫でられるたびに首をすくめたり。 私の体が硬直するのもお構いなしにジェービスは指の間に指を絡めてきたわ。 「恋人だったら自然な事だろ」って。 勿論嫌じゃなかったけど、どう反応していいのか分からなかった。 でも、ちょっとジェービスの方を見ると顔が少し赤くなっているのに気付いた。 意外と照れ屋なんだなって思ったらちょっと自然と頬が緩んで、笑っちゃった私にジェービスがむっとした。 繋いだ手と手を力を入れて前後に振って、照れ隠しだったのかなあ。 私はジェービスと一緒にいて幸せだった。 幸せだったのよ。
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