荊の姫

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「最近ジェービスが派遣された国境付近に危険度上位にランクされるようなオーガが出現しているらしい件なんですけど。目撃される地域が固まってたり事例には関連があるみたいで。これって何か対策とったほうが…って、聞いてますか、セラフィナ隊長?」 「なあに?ええ、勿論聞いてるわ」 「嘘はやめてください。貴女の態度を見てれば、全く何にも聞いてないことなんてすぐ分かります。厄介なオーガがジェービスのいる地区に出てるらしいんです。で、どうしましょうか?」 私は全く仕事のする気のなさそうなセラフィナに声をかける。 セラフィナは仕事を始めて軌道に乗ると凄まじい働きをするのだが、そうやらせるまでに宥め透かし叱りおだてと多大な労力を必要とする。 そんな気分屋、自分の部下だったらクビにしてやりたいが、彼女の地位は自分より上の中央軍大佐。 若く美しく有能な彼女は、軍の中でも民衆からの人気はトップクラスに高い。 些細な事でおいそれと糾弾出来ないのだった。 「そうね…」 セラフィナは気の抜けた声を出し、手を組んだ拍子に彼女の流れるような銀髪がさらりと揺れた。 セラフィナの私を見る視線は常に冷たい。 私は彼女に嫌われたようだった。 それならなるべく近付かないようにしようとしていたのに、彼女は直々に私を自分の補佐官に指名した。 そうなると役職上簡単にセラフィナから離れることは出来ないので、何食わぬ表情を保って彼女と付き合うしかない。 セラフィナの女神のごとき美貌は相変わらず何を考えているのかよくわからない。 「部下を見殺しにっていうのも嫌な話。今度視察に行ってみましょうか」 「そうですね。同じ地域にオーガが連続で出現するのは何か原因があるのかもしれません。ジェービスにもっと状況を報告させてみましょう」 最近とみに彼女の私を見る目がきつくなった気がする。
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