荊の姫

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彼女が視察に行くとならば私も同行させられる可能性が高い。 私と同じくセラフィナ隊に所属しているジェービスは現在そこに派遣されてしばらく会えていない。 久しぶりに彼の顔が見れるのは嬉しいけど、今回の問題の地域は国境近く、隣国との衝突も多いそこはある意味の無法地帯でもある。 …たとえセラフィナ隊長に殺されても様々な理由をつければ隠されてしまうだろう。 いや、そんなとんでもない事になる確証もないのに私は考えすぎではないか。 阿呆くさいと溜め息を吐く。 「じゃあ、なるべく早いうちに予定を組みましょう。まあ隊長の予定はぎっしりですから、早くても一ヵ月後になると思います」 「そう。ならしばらく国境警備隊もジェービスも自分たちで身を守ってもらうしかないわね」 「そうなりますね。でもたまには連絡をとってあげてください。何かしらあったら困りますから」 「…ええ。ジェービスにね」 「……」 …私が阿呆くさい事でもつい考えてしまうのは、ジェービスの事を語る時、セラフィナのまとう空気が一層冷ややかになる気がするからだ。 彼女はジェービスが好きなのではないか? ジェービスと付き合っている私が邪魔なのではないか? 「…では、手配しておきますので。隊長もあまりレイモンド副長に押しつけないで仕事を片付けておいてくださいね」 最近のレイモンド副長は頬がこけてしまっている気がする。 「苦労人だものね、レイモンドは」 「彼を苦労人に仕立ててるのはどこの隊長ですか」 「さあ?」 軽やかに微笑むこの人は薄情なのに美しい。 部下を大事にしないといつか彼女自身が泣かされるだろうに。 「もうちょっと副長のことを気遣ってあげてください」 こんな人のすぐ下にいる副長が哀れでならない。 「その言葉、そっくりそのままお返しするわ」 「え?」 予想もしなかった言葉。 「…私は同僚や部下に無理強いなんかたまにしかしませんが?」 私が仕事の無理を言うのは繁忙期に書類がごっそり回ってきた時くらいだ。
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