ドウセツ

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上弦の月が刀をおぼろげに照らしている。 噂の辻斬りが音もなく闇夜で人を斬り捨てる。 エッ、という音がこもった断末魔。 袈裟斬りで胴をばさり、声もまともに出せぬまま、町人は人知れず息を絶えた。 「むっ、何奴」 気配を嗅いだ辻斬りは闇夜で背後を振り返る。 闇に溶けた小さな影一つ。 月の光は刀をまばゆく照らしていた。 刀身そのものが紫電の光を発している。
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