7人が本棚に入れています
本棚に追加
一足一刀の間合いから、辻斬りは横薙ぎに刀を繰り出す。
はあっ、と発気一声、振り抜いた。
しかし空振りである。
あ……?
手ごたえのない疑問を声に出す間もなく、右手の先に人影と月明りを見た。
「やっ!」
刀を一振り、下から上に撫で上げる。
斬ったのは、刀だ。辻斬りの刀だ。
“のみ”で軟鉄を彫る感触と同じ。
しいん、という滑らかな斬鉄音。
金属が揺れる、きいん、という響く音は一切含まれない。
刀身は半分になり、刀の先は土の地面に転がった。
辻斬りはあっけにとられている。
薄ら光る刀を鞘に納める。
踵を返そうとした瞬間だった。
きええ、という声がした。
振り返ると、辻斬りが斬られた刀を振り下ろしている。
最初のコメントを投稿しよう!