scene.9

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中等部からずっとクリスマスセレモニーには出席していたけれど、まさか斎と一緒に出席する日が来ようとは。 でも、斎にもこのツリーを見せたいという気持ちはずっとあった。 だから、写真はよく見せてはいたけれど、やはり写真ではなかなか臨場感が伝わらない。 「写真でも大きいとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。やはり本物は違うな」 今考えていたことを読んだような斎の言葉に、私は益々嬉しくなってしまう。 「本物を見てもらえてよかった!」 それから私達は、ブッフェ形式で用意されたお料理の数々を堪能する。 一応、有名ホテルのケータリングだ。味は保証されている。 見た目も華やかな料理、そしてクリスマス仕様に施されたデザートはとても可愛くて、食べるのが惜しくなってしまうほどだ。 好きなものを取ってきて、ツリーを眺め、会話を楽しむ。 いつも “贅沢な時間だな” と感じてはいたけれど、今年は更に特別なものになる。 話している内容はいつもと変わらず他愛のないもの、それでも、イヴを斎と過ごすのは初めてだった。 そういったこともあり、心が浮かれ、楽しくて仕方ない。 相変わらず周りの視線が集まっていることに気づいてはいたけれど、あまりの楽しさに、そんなことは気にならなくなっていた。 そして、斎を見ても、それほど気にしていない様子で安心する。 せっかく来てくれたのだから、存分に楽しんでほしいという気持ちが届いたようで、そのことも嬉しかった。
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