scene.9

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私達はクロークでコートを預けると、大きな扉を開け、中に入った。 毎年思うが、この日の講堂はまるで別世界のようだ。 中央に見上げるほどの大きなツリーが鎮座し、周りには人がたむろし、記念写真などを撮っている。 数メール離れた円周上には、ところどころにテーブルが用意され、出席者達が食事を楽しんでいた。 前方のステージには、合唱部のメンバーが美しい歌声を披露している。 賑やかで、華やかで──。 いつもは、どちらかというと殺風景な印象なのに、ここはどこかと見紛うほどだ。 「すごいな…」 中央のツリーを見上げ、斎が呟いた。 私も一緒に見上げ、得意げに自慢する。 「でしょ! これだけは、うちの生徒だけなんて勿体ないって思うんだよね」 「そうだな」 二人顔を見合わせて笑う。
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