scene.9

2/28
前へ
/28ページ
次へ
それは、杏奈の非情な一言から始まった。 「今年の年末年始なんだけど、私、バリなんだ」 「…バリ?」 バリ? バリって何? 方言か何か? そんな下らないボケをしつつ、私はガクリと項垂れた。 「高校生活最後の年なのに、私を一人にするつもり? 薄情者!」 「最後だからさー、今年くらいは親に付き合わないと拗ねるんだよ…」 そう言って、杏奈はフゥと物憂げに息をつく。 しかし、すぐに元の表情に戻ると、思わせぶりに笑った。 「ホント、舞には申し訳ないと思ってるんだよ。いつもクリスマスとお正月は一緒に過ごしてたのに」 「そうだよ」 「でもまぁ、これもある意味いい機会かな、と思って」 「?」 私が首を傾げると、杏奈は益々意味深な笑みを浮かべる。 こんな顔した時の杏奈は要注意だ、とんでもないことを言い出す前触れのようなもの…。 と思って、私が構えていると。 「進学も決まって、後は卒業を迎えるだけのこのタイミングよ? こっちはまぁ毎年ヒマだけど、向こうはそうじゃないでしょ。今年がチャンス!」 「…向こうって?」 「やだなぁ、決まってるじゃん。向こうといえば、篠宮君でしょ」 「斎?」 私は目を丸くした。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加