132人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、杏奈の非情な一言から始まった。
「今年の年末年始なんだけど、私、バリなんだ」
「…バリ?」
バリ? バリって何? 方言か何か?
そんな下らないボケをしつつ、私はガクリと項垂れた。
「高校生活最後の年なのに、私を一人にするつもり? 薄情者!」
「最後だからさー、今年くらいは親に付き合わないと拗ねるんだよ…」
そう言って、杏奈はフゥと物憂げに息をつく。
しかし、すぐに元の表情に戻ると、思わせぶりに笑った。
「ホント、舞には申し訳ないと思ってるんだよ。いつもクリスマスとお正月は一緒に過ごしてたのに」
「そうだよ」
「でもまぁ、これもある意味いい機会かな、と思って」
「?」
私が首を傾げると、杏奈は益々意味深な笑みを浮かべる。
こんな顔した時の杏奈は要注意だ、とんでもないことを言い出す前触れのようなもの…。
と思って、私が構えていると。
「進学も決まって、後は卒業を迎えるだけのこのタイミングよ? こっちはまぁ毎年ヒマだけど、向こうはそうじゃないでしょ。今年がチャンス!」
「…向こうって?」
「やだなぁ、決まってるじゃん。向こうといえば、篠宮君でしょ」
「斎?」
私は目を丸くした。
最初のコメントを投稿しよう!