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ラストナンバーがカウントされ、斎は何事もなかったかのように私を解放する。
次の瞬間、ツリーのてっぺんから順に明かりが点り、急に辺りがパァッと明るくなった。
音楽に合わせ、流れるようなイルミネーションが演出されたり、パッ、パッとまばたきのように点灯が繰り返されたりと、煌びやかなショーが目の前で行われる。
しばらく呆然としていた私も、そのショーに思わず目を奪われてしまった。
そっと斎を見遣ると、斎も目を輝かせながら、ショーに見入っていた。
美しい、光の洪水。
それを眺めながら、さっきの出来事を思い返す。
──斎に触れていた部分が、熱い。
身体の熱を感じた時、知らず知らず、涙が零れていた。
わかっていたつもりだったのに、私は全く自分の気持ちに気付けていなかった。
幼馴染とか、一人の男性としてとか、そういったことじゃないんだ。
そういったことじゃなくて……。そんなことはどうだってよくて……。
息が上手く吐けなくて、胸がいっぱいになる。
──私はただ、『篠宮斎』が好きなんだ。
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