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「舞?」
「…」
私を見るや否や、斎が目を細め、ポケット中からハンカチを取り出した。
「また泣いているのか」
「か…感動したんだから、しょうがないじゃん」
斎からハンカチを受け取り、涙を拭う。
斎は「よく泣くな」と呆れたように笑い、いつものように私の頭を撫でる。
いつもと違うのは、今日ばかりは綺麗にセットされた髪が崩れないよう、気を遣ってくれているところだ。
感動ももちろんしたけれど、この涙はそうじゃない。
いつの間にか、私の気持ちはこんなにも大きく育っていたんだという事実に、少しばかり驚いてしまっただけ…。
「斎」
「なんだ?」
この想いを斎に告げるのは、もう少し先になるかもしれないけれど。
私自身が、きちんと受けとめてから……。
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