scene.9

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「舞?」 「…」 私を見るや否や、斎が目を細め、ポケット中からハンカチを取り出した。 「また泣いているのか」 「か…感動したんだから、しょうがないじゃん」 斎からハンカチを受け取り、涙を拭う。 斎は「よく泣くな」と呆れたように笑い、いつものように私の頭を撫でる。 いつもと違うのは、今日ばかりは綺麗にセットされた髪が崩れないよう、気を遣ってくれているところだ。 感動ももちろんしたけれど、この涙はそうじゃない。 いつの間にか、私の気持ちはこんなにも大きく育っていたんだという事実に、少しばかり驚いてしまっただけ…。 「斎」 「なんだ?」 この想いを斎に告げるのは、もう少し先になるかもしれないけれど。 私自身が、きちんと受けとめてから……。
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