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「今日は、ありがとね」
「礼を言うのはこっちだ。…ありがとう」
「…どういたしまして」
柔らかな笑みを浮かべる斎を見上げ、私も精一杯の笑顔を返した。
セレモニー終了のアナウンスが流れ、人々は講堂から出ていく。
その人混みに飲まれるように、私達もロビーに向かって歩き出した。
「改めて見ると、ホントすごい人だね」
「はぐれるな」
「子供じゃあるまいし。それに、もしはぐれたとしても連絡できるし」
今はスマートフォンという強い味方がある訳で。
でも。
今日はせっかくのクリスマス・イヴ。まだまだ満喫しても、バチは当たらないよね?
「じゃ、はぐれないように」
私は腕を伸ばして、斎の手を取った。
斎は驚いて私を見る。
「おい…」
「大丈夫だよ。親からも、先生からも、許可はもらってるんだからね」
そう言うと、斎が肩を震わせた。
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