scene.9

25/28
前へ
/28ページ
次へ
「今日は、ありがとね」 「礼を言うのはこっちだ。…ありがとう」 「…どういたしまして」 柔らかな笑みを浮かべる斎を見上げ、私も精一杯の笑顔を返した。 セレモニー終了のアナウンスが流れ、人々は講堂から出ていく。 その人混みに飲まれるように、私達もロビーに向かって歩き出した。 「改めて見ると、ホントすごい人だね」 「はぐれるな」 「子供じゃあるまいし。それに、もしはぐれたとしても連絡できるし」 今はスマートフォンという強い味方がある訳で。 でも。 今日はせっかくのクリスマス・イヴ。まだまだ満喫しても、バチは当たらないよね? 「じゃ、はぐれないように」 私は腕を伸ばして、斎の手を取った。 斎は驚いて私を見る。 「おい…」 「大丈夫だよ。親からも、先生からも、許可はもらってるんだからね」 そう言うと、斎が肩を震わせた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

132人が本棚に入れています
本棚に追加