ガラスの踊る

……気がつけば、わたしは違う場所にいた。
いつの間に移動したのだろう？風が何かの白っぽい花弁を散らしている。

ガラスでできた女性が踊っていた。

夕暮れの、紫色と朱色が美しくグラデーションを描く空の下、あまり手入れの行き届いていない林の黒い影の様なものを背景にして、踊っている。

時折、太陽の光が透明なガラスに反射して、滑るような輝きを見せる。先程わたしはなぜガラスだと思ったのかはわからないが、それを見てやはり彼女はガラス製だと思った。
彼女がいるのは白い板を敷き詰めたような小さなステージだ。いつできたものかわからない。縁のほうは雑草に侵食されているようだった。

わたしは椅子に座って、それを見ている。

銀色の人の形をしたものが、ゆっくりと向こうからステージに向かって歩いている。

わたしは立ち上がろうとしたが、動けない。まるで接着剤で貼り付けられたようで、みじろぐことも許されない。何か言いたかったが、口を開くことも出来なかった。

パリン、と小気味良い音を立ててガラスが砕けた。銀色の人の形をしたものが、剣の形をしたものを打ち付けたからだ。

銀色の人の形をしたものが、今度はわたしに向かって歩いて来る。近くに来ると、銀色の鎧を着た人間だと分かる。それは、顔から血を流していた。あれでは前は二度と見えないだろう。その人は、わたしに向かって手を差し出してきた。