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漫画を読むなんてオタクじゃねえの。
そう言われるのが嫌で、俺は昨日までチャラ男だった。
童貞は捨てられなかったが、沖縄の海でスキューバダイビングのライセンスを取り、旅行中の女の子とひと夏の思い出をゲットしようとしていた。
まあ結果は童貞は大切で捨てられなかった。
負け惜しみではない。ことごとくナンパが失敗したわけではなく捨てたら魔法使いになれないと、俺の心が夕日に叫んでいた。嘘だけど。
そんなわけで、童貞をこじらせた俺はもう開き直ってオタクで良いと思い、尊敬する漫画家のアシスタント募集を本誌で知り上京した。
未経験者でも大丈夫と言う言葉を信じて。
しかし、待っていたチーフアシスタントは、とんでもない相手だった。
「ふむ。履歴書を見せて貰ったよ。採用」
「は?」
「スキューバダイビングのライセンス持ってるなんて、君、最高だよ。今年は活躍すると思うからよろしくね」
速攻で採用された。
俺の上司になる、チーフアシスタントの十文字 時安(じゅうもんじ ときやす)さんは、俺にとんでもない数々の試練を与えてくれる人だったが、彼も彼でとんでもない漫画家のチーフアシスタントをしているので仕方なかった。
「では、君の仕事場に案内するよ」
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