第1章

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頭を撫で回す。コブのようなふくらみは感じない。両手を眺める。薄暗がりの中だが、血はついてなさそうだ。 外傷による記憶の混乱かと思ったが、違うようだ。 けだるさの残る体をおこすと、自分が粗末なベッドの上で眠っていたことがわかる。 自分の部屋でない事はわかるが、自分の部屋が思い出せない。 名状し難い感覚の中、自分が何者か考える。 …シーナと呼ばれていた。それが名字か名前か、はたまたアダ名かもわからないが。 寝起きが悪い以外、身体的な不安はなく、どちらかといえば明るい性格。 辛い物が好きだ。誰と食事をしていたか知らんが。 学生ではなかった気がする。酒も好きだったし。 どこで暮らしていた?日本なのは間違いないのだが。 物の名前、地名も思い出せるのにどうして自分の事になると全くわからないのだろうか。
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