第1章

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思案していると、ふと不自然な状態だと気付いた。 どうして不安や焦りを感じないのだろう。 欠落した記憶。扉すらない、剥き出しの岩盤のような部屋。宙に浮いた光源。 身の危険を感じてもおかしくない状況で、どうしてこんなに落ち着いていられるのか。 「わかんねぇなぁ」 つい、一人言をもらす。 いつの間にか、頭痛も体の倦怠感も消えていた。 考えてもわからないので、なんとなく立ち上がった瞬間、急に目の前が明るくなる。 「うおっ」 突然の事に思わず体がびくっとなり、声をあげてしまう。… 誰もいないのに何だか気恥ずかしい。 新たな光はSF映画で見るような、半透明のディスプレイ。空に浮かび、表示された文章の背面が透けている。
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