偽銭師と貧者

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 今日は久方ぶりにご主人様から賃金が支払われた。これで久方ぶりの食事にありつけれると思うと、足は軽くなっていく。軽くステップをしながら市場に向かって行く。  市場に着いて、手の中の貨幣を確認した。手の中には銅貨が一枚だけ有り、これで買える物を探さなければならないのだ。  市場の中の店を見ながら歩いていると何かにぶつかった。僕はぶつかり倒れて空を見上げた。空は羊毛のような雲が時折、太陽の光を遮り青空を泳いでいる。  きっと、あの雲は何にも捕らわれずに何処にでも行けるのだろうな……僕のように食べる物を探す必要もなく、ただ自由にいられるのだろうな…… 「君、大丈夫?」  さっきまで、雲と青空だけが僕の目の前に広がっていたが、僕の視線を遮るように黒い陰が差し込んできた。  
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