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ヒカリさんの叶わなかった夢を、ゆたかくんが実現させた。
その時、ちょっと悔しかったんだそうだ。
高校時代、 ヒカリさんはレコード会社に
デモテープを送ったことがあった。
朗報はなく、わりとたやすくプロになる夢を捨てていた。
悔しいといってもさびしい気持ちの方が強い。
弟のようにかわいがっていたゆたかくんが
これから 自分を離れ、遠くに行ってしまうと思うと。
こんな風に私とヒカリさんは、
うちの近くのファミレスで、時々会っていた。
コーヒーだけ飲んで、ひとしきり話したら
「またね」と別れる。
別れはいつもファミレスの駐車場。
ヒカリさんの車を私はいつも見送った。
見送ってから道路を渡り、1分歩けば私のうちだ。
あれから何年たっただろう。
’92年、あんな事件がおこらなければ、
ヒカリさんに出会うことも、
こうして一緒にコーヒーを飲むこともなかったはずだ。
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