2話 ボクとゆたかくん 

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「ごめんなさい、待たせちゃって」 携帯を手に持ったまま、 私の前に座ってコーヒーを注文した。 疲れ切った顔をしているのに、目だけは鋭い。 「大変でしたね」 「ボクのせいなんだ、守りきれなかったことが苦しい」 と、私ごときに涙をみせた。 ヒカリさんのせいじゃない。 ゆたかくんに寄り添っていた ヒカリさんだからこそ、 自責の念は消えることがない。 ヒカリさんのせいじゃない。 「私にできることがあったら、 何でも言って」 と口走っていた。 その間も、ヒカリさんの携帯は 鳴り続けていた。 「なに?だめだよ。もうおしまいに しよう」 切るとまた呼び出し音。 「だからさ、今、人と会ってるから 切るよ」 しつこくからんでくる人がいて、 自宅まで付きまとわれたり、 していると言う。 いつも録音機を隠し持っているそうだ。 危険と紙一重。
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