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4.松濤
事務所には音楽の機材がところ狭しと置いてあり、
一通り見まわしてから、
無造作に置いてあるスツールに腰をかけた。
空白があっという間に埋まって、
ずっとここにいたかのような錯覚におちいる。
ゆたかくんは水割りで、
ヒカリさんにはウーロン茶を持ってきてくれた。
「どうしたの?とつぜん」
ゆたかくんを見ると、さっきまでの笑顔は消えていて、
順調そうな仕事が、実はうまくいってないと言い出した。
ヒカリさんは耳を疑い、
ゆたかくんの訴えをまずは聞こうと、立ち上がり、
ゆたかくんのいるテーブルのほうへ移動した。
10代で頂点に上り詰めたカリスマは、
虚像と実像、ビジネス的商戦への不信感、
紆余曲折、いろいろあって
精神状態は極限にたっしているように見えた。
「会社、やめて、オレの仕事、手伝ってくれない?」
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