2話 ボクとゆたかくん 

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4.松濤 事務所には音楽の機材がところ狭しと置いてあり、 一通り見まわしてから、 無造作に置いてあるスツールに腰をかけた。 空白があっという間に埋まって、 ずっとここにいたかのような錯覚におちいる。 ゆたかくんは水割りで、 ヒカリさんにはウーロン茶を持ってきてくれた。 「どうしたの?とつぜん」 ゆたかくんを見ると、さっきまでの笑顔は消えていて、 順調そうな仕事が、実はうまくいってないと言い出した。 ヒカリさんは耳を疑い、 ゆたかくんの訴えをまずは聞こうと、立ち上がり、 ゆたかくんのいるテーブルのほうへ移動した。 10代で頂点に上り詰めたカリスマは、 虚像と実像、ビジネス的商戦への不信感、 紆余曲折、いろいろあって 精神状態は極限にたっしているように見えた。 「会社、やめて、オレの仕事、手伝ってくれない?」
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