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校舎を飛び出し、統一政府の中枢に位置するビル目掛けて走る。
無数の魔法攻撃を受け、それでも傷一つない堅牢なる居城からのアクションはない。わざわざ迎撃するまでもないと見下しているから? いいや、だとしても、歯向かう奴を見逃すほど魔法使いって生き物は寛大じゃねえ。
来るぞ、反撃が。
世界を統一するに足る絶対的な力が。
「くそっ」
直線距離にして一キロあるかないか。
陽香は地上ではなく空中から攻めていたから、地上組と違い校舎の三階からでなくとも目視で確認できる。
ああもう、数十人ほどのグループがいくつかあるが、なんだってよりにもよって『奴』のそばにいるんだよ!!
「どうすればいい!? もう始まった、猛獣の群れに喧嘩を売った!! ここからどうすれば陽香だけでも救い出せる!?」
走る、走れ、足を止めるな。
後先考えない全力疾走のせいで喉はすでに干上がって痛みさえ発していて、脇腹からは貫くような痛みが走るが、こんなの足を止める理由にはならねえ。
時間がない。致命的に出遅れた!!
統一政府の中枢、元黒薔薇の姫君にして現絶対女王の居城に向けて魔法攻撃を仕掛けた。こんなの自殺行為だ。生存確率なんてゼロに等しい。
いくら一度崩壊し、世界規模の戦争を通して総力を大きく損なったとしても、統一政府が単体最大最強組織であることに変わりはない。
勝負に挑むことが間違い。
敵対する前に手を打って、勝負を回避するのが唯一の生存ルートなんだ。
崖っぷちどころか飛び降りちまってやがる。この場を生き残れるかどうかさえも絶望的なら、その先一生を統一政府からの追っ手に怯えていろと? 世界を統一する単体最大最強組織から逃げ切れと?
出来るわけがない。
そんなの不可能だ。
ならば。
それでも。
「ちくしょうが!! やってやるっ、策なんてさっぱり思いつかねえが、ようやく取り戻した『幸せ』を壊してたまるかってんだあっ!!!!」
ああそうだ。それが答えだ。
解なしの解答不能問題だからなんだってんだ。ならば、新たに答えを作り出してやる。二人は『幸せ』に過ごしました、と。そんな甘ったるい、幼児向けの完全無菌でありきたりな結末を掴んでやる。
現実逃避でしかねえ。
御都合主義が導く甘い蜜に脳が犯された、馬鹿の夢物語だ。
それがどうした。
惚れた女ぐらい理屈も現実も強敵も何もかもねじ伏せて、この手で抱きしめてみせろ!!
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