終章 穢れなき未来へと

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ーーー☆ーーー 白燐の乙女の伝説、その一つ。 『至宝挽歌』の殺害。彼女は時間軸を支配し、過去に使用した魔法を現在に呼び戻す戦法を得意技としていた。つまり戦えば戦うほど、魔法を使わせれば使わせるほどに手札を増やす無限増殖の使い手。そんな怪物を白燐の乙女が殺害したがゆえに、アイリャント=ブルガリナ=アースライトニングが新たに『至宝挽歌』の座に君臨した。 そう、彼女は過去に使用した魔法を再生、具現化する。それを繰り返すことで無尽蔵に魔法を連発する。 『過去』を軸とした魔法を扱う、そこを拡大解釈していけば、いずれは……。 ーーー☆ーーー 『もう一人の神将』、姫川楓と同等の領域に君臨するはアンジェリカ=ゼロセンス。赤い軍服の上に毛皮のコートを着込み、さらにマフラーやらもふもふの手袋やらを追加してもなお寒さに震えるくらいには寒がり(?)な高校生程度の少女である。 単純な実力だけならば絶対女王直属兵団兵長を上回る知られざる天才は統一政府の中枢に位置するビルの屋上に出る。 扉を開け、空中に浮かぶ有象無象どもを見つめ、コキリと首を鳴らす。 「挑む相手ぐらい選べって話かも」 アンジェリカの魔法は視界に収めた『全て』を両断可能な銀刀。範囲に限りはない、視界にさえ収まることができれば、その全てを両断可能なのだ。 例えば、そう。 毛皮のコートの内ポケットから取り出したサングラスと人工衛星とを繋げ、地球全域を監視する超広範囲監視網から映像を飛ばし、『その映像を目で見る』ことができれば、地球の裏側の標的だろうとも両断することができる。 だから、サングラスをかけ、映像リンクを開始、統一政府の中枢に位置するビルを取り囲む敵対勢力を人工衛星からの衛星カメラで上から見下ろすように捕捉、その『景色』へと右手にだらりと下げた銀の刀を振るうだけで勝敗は決した。 ズッバァァァンッッッ!!!! と。 空中も地上も関係なく、包囲網の一角が上から降り注いだ銀の斬撃に斬り裂かれ、その一角に浮かんでいた魔法使いを根こそぎ両断していった。 肉片が飛び散る、命が朽ちる。 まさに必殺。大量破壊兵器にも似た、ボタン連打の極致。 後は繰り返すだけでいい。敵が朽ちるまで何度でも。勝敗は決したも同然の圧倒的戦力差に敵対者どもは絶望するしかないのだから。 「な、あ?」 だから。 それなのに。 『彼女』が戦場を席巻する。
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