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獣にも似た雄叫び、ぶつかり合う金属音、目に見えずとも確かに感じられる......闘気。
互いの王、その御前に行われる交流試合。
交流とは名ばかりに、それは各々の国力の顕示、威圧、抑止力。
王達は試合う兵を見る様で見ず、その先に他国と自国の力差を測り、その結果如何では戦争の火種にもなる。
現に数日前、
醜王「主の国の兵では、自国の統制も危ぶまれるのではないか?我が国が庇護しよう」
そう申し出た醜国によりこの戦いに大差で敗した敗戦国は事実上の支配下に降った。
戦力差が歴然ならそういった事も起こり得る。ここはそう、強国のみが存続を許される世界なのだから仕方もないが......僅差の、勝敗こそは忌むべき事に戦火の皮算になりえる。
だからこそ、私には僅差の敗戦さえ許されない。
この母国の兵を統べる者として敗北は侵略を受け入れるに等しく、私が愛してやまないこの母国が危機に晒されることを意味する。
王に一礼、ふとその横に座る姫君に目を奪われる。
姫君は、誰に対しても優しかった。その優しさ故に、他国の好奇を惹きつけた。
兵士長(美しく、可憐だ......決して届かぬ高嶺の花か......それでも、この花を守る盾で在れることこそが我が誇り)
剣を抜く、盾を構え、向かいくる者の首をはねる。
醜国の王の冷酷な目が姫君に向くのが分かる。眼前には9の兵。
醜王「この試合負けてはくれまいか?君は優秀な兵だ。出来れば損ないたくはない」
兵士長「母国を護るのが私の責務です」
歴然の戦力差。それでも剣を握るのは私の執着でしかないのかもしれない。
兵士長となったあの日、私の腕を掴み姫君は言った。
姫君「兵士長さん。私の血も貴方の血も変わらず赤いのです」
兵士長「勿体ないお言葉です。私はこの国を護る為に生きております」
姫君「貴方に護られる人はきっと幸せでしょうね」
以来、姫君は幾度となく私を気にかけて下さった。
足を切り、
剣を弾き、
身体ごと吹き飛ばす。
一兵士が想いを抱くことさえ、あり得てはならない想いにさえ貴女は優しかった。
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