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兵士長「母国の為と言えば聞こえはいい。しかし、明日の私の剣は......私利私欲の剣かもしれませぬ。無様と笑って下さい」
姫君「私には父を、民を裏切る勇気がありません。でも、誰に笑われようと、その私利私欲の剣は私にとってこの世で一番、嬉しい剣です......その言葉だけで充分です。決して無理はしないで下さい」
試合の敗北、その意味を分からない姫君ではないだろう。
それでも貴女は私欲に溺れる私に優しくされるのか。
盾にヒビが入る。
剣が欠ける。
足がもつれる。
遠退く意識しての中、醜国の王と目が合う。
醜王(何をそんなに必死なのか?結果はもう出ているだろう。早く折れてしまえ)
目から伝わる言葉に思わず笑いがこみ上げる。
兵士長(私が挫けるとだけは期待しない事だ。私の剣が折れようとも、既に胸にあるこの想いだけは砕く術がないのだから)
剣を捨てる。
振り下ろされる剣を避け、顔を殴り、投げ飛ばす。
醜王「ーーー!!」
王「ーーー」
姫君「ーーー」
耳はすでに死んでいる。
鼻は曲がり、瞳は濁り、腕は震えている。
それでも気配は分かる。
緩慢に近づくそれを仕留めようとした次の瞬間、それは私の胸に飛び込み、その瞬間、嘘のように視界が開けた。
姫君「ありがとう......ございました」
兵士長「しかし、それでは......それでは!!」
王は伏せり、醜王は醜悪に嗤う。
姫君「やはり、貴方に護られる人は幸せです。この幸せ(想い出)だけで私は充分です」
兵士長「っーー勿体のない......お言葉です」
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今は静かに、石の下に眠るその花に今日も語らう。
兵士長「貴女を今も好いています」
今日も想う。いつまでも想う。最愛の花。いつまでも、いつまでも私の頭の中に咲き続ける。
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