第2話 《成り上がり》

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自動販売機の缶コーヒーが100円玉で買えた頃…尾崎豊の15の夜を聴いていた少年はいつの間にかおじさんになってしまった。 電車の中、座った窓ガラスに頭を付けると冷たかった。 「頭…薄くなったな…」と俺は後頭部を触った。 朝早くから電車に乗り帰りは9時過ぎだ…。 30で結婚はしたけれど妻は俺が家へ着く頃は夢の中だ…冷蔵庫からラップに包まれた皿を出して温め夕飯を食べて妻が入った温い風呂を炊いて入って寝る毎日だ…。 俺は客の少ない電車の中で財布からこの前、駅前の宝くじ売り場で買ったロト7を取出しガラケーを開き数字を確認した。 「!!…当たった…キャリーオーバーで8億…」 震える手でロト7を財布の中へ押し込んだ。 明日会社休んで銀行へ行き5千万だけ現金でもらい家のローンを返して妻に2千万円渡して離婚して俺は5千万円くらいのマンションを買って会社辞めて1人で暮らそう…などと夢を見ていた。 俺は次の日、家を出ると「風邪なので休みます…」と会社に電話を入れ銀行へ向かった。
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