4章 太陽神の裁き

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・ 盗賊の癖になに言ってんだか…… もしかして貧しい人は助けるってヤツ? 義賊? 石川の五衛門ですか? ザイードに目を向ければ露店の敷物を広げた親子から沢山の商品を奪うのではなくちゃんと買っている姿が見える── ザイードだけではない。 一緒に出向いてきた黒装束の供の者皆が数少ない露店で買い占めるように品物を選らんでいた。 「マナミ!」 ザイードが遠くから呼び掛ける。 愛美はそこへ足を向けた。 反物のように長い棒に巻かれたシースルーの生地を手にしている。 薄紫と濃い紫。濃淡の綺麗なグラデーションの色をしたそれを長く引っ張り手に取ると、黒装束で頭を覆った愛美の顔を露にしてその布を愛美に被せた。 「肌が白いから紫が合うな」 「……──」 さらりと誉めて微笑んだザイードに愛美は顔を赤く染めた。 ベールのように薄い布を被せたお陰でその肌の火照りがザイードにはバレていない。 男ながら器用にもザイードは長い指先で愛美に布を巻いていく。 ピンで仮留めして形を整えるとザイードは隙間から覗く愛美の濡れた瞳に一瞬だけ視線を止めた。 口元を覆った薄い布を避けてザイードの指の甲が愛美の唇をなぞる。
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